おひとり様倶楽部×大学生 オンライン活用セミナー事業
事業の概要
大学生と高齢者のコラボ事業
この事業は独居の高齢者の集まりである「おひとり様倶楽部」の皆様に愛媛大学社会共創学部の学生さんたちのコラボ事業である。
スマホの活用の仕方について、研修会を開き丁寧に伝える。その後に、リアルとオンラインの両方で、簡単な健康づくり運動指導とさらなるオンラインの活用の仕方についてのセミナーを実施し、新型コロナ感染症のリスクを軽減した形でのフレイル予防を実現するとともに、高齢者と若者の交流を促すものである。
この事業が必要な背景
新型コロナ感染症の影響で、高齢者のフレイルが問題となっている。
リスクが高い高齢者はコロナ禍の外出自粛をものすごく良く守って、文字通り家でじっとしている方が多い。もちろん感染が怖い・・ということもあるが、地方の高齢者の場合、もしコロナに感染するとすぐに誰がかかったか特定されてしまうので、いわゆる村八分状態になるのが怖いという事が大きい。
しかし、高齢者の場合、「動かない」でいると「動けなく」なるのだ。
廃用性症候群がすすむスピードもとても早い。コロナに感染しなくても、自粛によるフレイルで、体力も免疫力もなくなり他の病気にかかってしまったり介護が必要な状態になる場合も多い。特に独居高齢者の場合、誰とも会話もせず一人で自粛期間中すごす方も多く、うつ状態に陥る場合もある。
そこで、今まで当NPOでもオンラインセミナーやオンラインレッスンなどに取り組んできたが、なかなか高齢者には浸透しなかった。高齢者はITに弱いというより、スマホやパソコン自体をもっていない場合も多く、wifi環境にない場合も多かった。なので、パーソナル指導は別として、当NPOでは今までオンラインで地域リーダーにコロナ禍の高齢者のココロとカラダの健康づくりについて伝え、その地域リーダーを通して一般の高齢者にコロナ禍の健康づくりをすすめてきた。
しかし、できればスマホを持っている高齢者の方がそれを活用できるようになれば、もっとこの問題を解決できるのではないかと考えていたところ、愛媛大学社会共創学部の学生さんたちがコラボ事業として取り組んでいただけることになったというわけである。
おひとり様倶楽部とは?
大学生とコラボして、この事業に参加いただいている「おひとり様倶楽部」。
この組織が出来てから3年弱になる。ちょうどコロナ禍になる少し前、このNPOの副理事長の松本陽子さんが声をかけ、連れ合いをなくしたり、元々ひとりで暮らしていたりしている方を集めて作った組織である。
きっかけは、松本陽子さんが癌を患い運動指導の仕事を退いた時、今まで超忙しかった生活から解き放たれて出来た時間で何かできないか・・と考え、様々な理由で体操教室を退会したり長期にお休みせざるをえなかった方にお電話をしたことである。
お電話をすると、みなさんとても懐かしがられ喜ばれたが、特におひとりで暮らしている方にとても喜ばれたそうだ。連れ合いをなくされたり、元々ひとりで暮らしている方は、友人と話をしてもみな家族の話とかになり話が合わない。お正月などは寂しさや孤独感が募る。。でも、おひとり様の人で集まってお茶でもすると、皆少なからず同じ思いをしていて話が合って楽しい。
ということで、おひとり様が集まって定期的にお茶したり食事をしたり、プチ旅行をしたり、何か勉強会をしたりすれば楽しいのではないか・・ということで始まった会である。
コロナ自粛がもたらす問題
ところが、このコロナである。定期的に集まっていた楽しい会も自粛せざるを得なくなった。出来るだけみんなで電話し合おう・・ということになったが、自粛生活も長引いてくると電話にも出れない方ができてきたのである。ちょっとした鬱状態である。それも一人ではない。
また、多くの方が自粛してい間にカラダが弱ってきて、歩くとしんどいような状態になってしまった。おひとり様倶楽部の方は体操教室の受講生が半分以上いるから、とても健康づくりや運動に関心がある方で、自宅でもスクワットなどもするのだが、それでも生活範囲は狭まり、みんなとても体力が弱ってしまったという。これが一般の高齢者ならなおさら体力が衰えるのだろう。
第1回、スマホ活用セミナーの様子 高齢者×大学生
おひとり様倶楽部の皆さんは、1回目の自粛生活後、みんなでスマホを持とう!!ということになった。LINEのグループ機能を使いみんなで話をすれば、電話とはまた違った楽しさがあり、次の自粛期間が来てもちょっと楽しいに違いない・・と・・
苦労を重ね、ようやくLINEのグループ機能でみんなで連絡や楽しい話ができるようになってきた。
そこで、以前、NPOでオンラインセミナーを開催したのだが、これは超難関だったらしく、なかなか参加が出来なかった。NPOで中心的に活動しているスタッフも皆仕事を持っているため忙しく、なかなか個別にスマホのアプリの入れ方とか手取り足取り講義はできない・・・
そんな状況の中、この愛媛大学の学生さんたちとコラボしてスマホの使い方もオンライン体操もできるというありがたい企画が出来た。
おひとり様倶楽部の方だけでなく、その友人らも興味のある方が集まって、第1回が開催された。
自分の孫、いやそれより若い子に手取り足取りアプリのインストールの仕方からしっかりと教えてもらえる。娘や息子に教えて・・と言ってもめんどくさがられるけれど、授業で自らの研究できている学生さんたちは目をキラキラさせながら教えてくれる。と、大好評!!
でも、ちょっとというか、随分と難航したのは言うまでもない。当初の予定では2時間だったけれど、大幅にオーバーして、ようやくオンラインセミナー用のアプリをダウンロードして使えるようになった。
オンラインでの運動指導 高齢者×大学生
そう、使えるようになったはずだった・・・
でも、その次の週、実際にオンラインで体操を・・と思っていたのに、まずパスワードが打ち込めない人、音声や画像が出ない人・・と問題は続出した。
でも、回を重ねるごとになんとかオンラインに参加できる人も増えてきた・・ところにオミクロンである。
でも、この事業に取り組み始めていたこともあり、学生さんと楽しくオンラインで体操ができている。このオミクロンが少し収まったら、またリアルで学生さんと仲間とで集まってセミナーが開けることを楽しみに、オンラインでの会話も弾む。
この事業の本当に素晴らしい点とは・・
この事業を開催して、本当に素晴らしい・・と思える事は、新型コロナ感染症のリスクを減らせることでも、オンラインで体操できることでも、実はない。
もちろん、その事自体、素晴らしい事なのだが、本当に良かった事は別にある。
皆さんの本音を言うと、参加した方の多くは体操教室でベテラン運動指導者の運動指導を受けてきた人であり、学生さんのつたない運動指導を微笑ましく見ながら、どちらかというと運動に関しては逆に盛り上げてあげて付き合ってあげている感がある。
でも、何より良かったのは、一番に若い人と交流が持てた事。
二番目には、スマホの色んな使い方(といっても、60歳以下の方からいうと、最も基本的な使い方になるが)をゆっくりと教えてもらって、例えば色々検索をしたり、YouTubeを見たりとか楽しみが増えた事。テレビでコロナのニュースをずっと見ているより楽しい。
あと、オンラインでの体操する事自体も良いのだが、そこで仲間と色々顔がみられておしゃべりできる事。オンラインともなると、部屋もうつるし顔も当然うつるから、服をきがえなきゃいけないし、化粧もしなければならないけれど、それはとても面倒なことだけれど、そうして装うことで自粛生活にハリができるのだ。これがまた良い。
まだまだ事業は途中だけれど、お一人暮らしの皆さんにとって、本当に素晴らしい体験だと思う。本当は、これをもっと多くのお一人暮らしの高齢者の方に広める事ができれば良いのに・・と思う。